「線虫?」……って何?という疑問が浮かぶかと思いますが、線状の細い虫であることは間違いなさそうです。

線虫とは、ギリシャ語では「「nematoda(ネマトーダ=ひも)」と呼ばれており、分類学上では「線形動物門に属する動物類の総称のこと」を指します。

要するに、ほとんど肉眼ではよく見えない小さな線状の生き物のことです。

線虫には多数の種類があり、その中には動物に寄生するものもあれば、植物に寄生するもの、また、野菜などの腐敗物から増殖する菌を餌にして、土中を動き回りながら密やかに棲んでいるものもいます。

動物に寄生する線虫で知名度一番な線虫は、「アニサキス(学名:Anisakis)」。

回虫目アニサキス科アニサキス属に属する線虫の総称で、海産動物に寄生します。

時に人間にも害を及ぼし、その身の毛もよだつ悪行はたくさんの人々に流布されて恐れられています。

植物に寄生する線虫では、「根腐れ線虫」、「根こぶ線虫」などが挙げられます。

いずれも植物に被害を与える線虫です。

寄生性線虫は、期待される植物収穫量およそ10%に被害を与えるとされます。

単純に野菜などの腐植質を食べ、のほほんと暮らしている線虫たちは、人に対して特に利害をもたらさないため、「自活性線虫」と呼ばれています。

地球に生息している線虫のおよそ90%は自活性線虫であり、土を豊かにする立役者です。

自活性線虫は落葉などの有機物を餌にして分解し、微生物が活動しやすい土壌を作ります。

肥沃な土質で自活性線虫が多ければ多いほど、植物に寄生して悪影響を及ぼす寄生性線虫の数は減少するそうです。

線虫は、地球上に数千万種が存在していると言われます。

ミミズ 線虫 違い

ミミズは環形動物門に属し、線虫は線形動物門。寄生性の線虫は厄介な奴ら

ミミズは環形動物門貧毛綱に属する生き物の総称で、主に土中に生息し、土壌中の微生物を餌にします。

「地球の虫」、「ミミズの糞土は黄金の土」とも言われ、大概は「益をもたらす生き物」として評価されています。

線虫は線形動物門に属し、土の中や水中など、地球上のあらゆる所に生息しています。

体表は堅い膜(キューティクル)で覆われ、その姿は細長い糸状(ひも状)です。

無色透明で骨はなく、幼虫の体長はおよそ0.3~1mm。

目視で確認はできません。

大多数が無害で非寄生性線虫ですが、中には植物や動物に寄生し、害をなす線虫もいるため、植物に寄生する線虫を専門とする「植物寄生線虫学」と動物に寄生する線虫を専門とする「寄生虫学」という2分野で研究が行なわれています。

動物に寄生する線虫には、回虫や鞭虫なども含まれます。

動物の体内では、寄生性線虫の成虫の体長が数メートルになることもあります。

線虫の特徴など。ミミズとの違いは?

一般的に、ミミズの体は細長く、多くの体節に分かれています。

体表面には体節ごとに短く頑丈な毛が生えており、これが活動時には接着面にスパイクの役割を果たすため、進行方向に進むことができます。

ミミズの体表は、主に茶褐色。

多くのミミズは雌雄同体です。

線虫の体は細長い糸状。

一部の種では体表に剛毛があります。

基本的には体色は無色透明で体節はなく雌雄異体です。

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植物寄生性の線虫について

植物や作物を栽培する上で、基本的に「益をもたらす」と見なされているミミズと違い、植物に寄生する線虫は一度発生したら根絶はほぼ無理と言われるほどの厄介な害虫です。

主な線虫には、「根腐れ線虫」と「根こぶ線虫」が挙げられます。

根腐れ線虫

国内で確認されているおよそ20種の根腐れ線虫のうち、特に要注意なものは、キタ根腐れ線虫、ミナミ根腐れ線虫、クルミ根腐れ線虫の3種です。

寄生される範囲が広範囲に亘り、根と土壌の間を行き来しながら、寄生している作物に被害を与えます。

根腐れ線虫の生活環は以下の通りです。

卵→卵の中で1回脱皮後、2期幼虫となり孵化→2期幼虫態で根へ侵入し始め、根と土壌を行き来しながら養分を摂取→3回脱皮後、成虫に→交尾後、植物内か土壌中に産卵→卵

……の繰り返しです。

根こぶ線虫

国内で確認されているおよそ8種類の根こぶ線虫のうち、特に要注意なのは、サツマイモ根こぶ線虫、キタ根こぶ線虫、アレナリア根こぶ線虫、ジャワ根こぶ線虫の4種です。

根菜類やいも類、果樹類など、寄生作物は広範囲に亘ります。

線虫が根こぶを作り、作物の養分・水分の吸収を妨げます。

根こぶ線虫の生活環は以下の通りです。

卵→卵の中で1回脱皮後、2期幼虫となり孵化→2期幼虫態で根に侵入し、根内に定着→定着周囲の植物細胞は巨大化し、根こぶを形成→巨大化した植物細胞から養分を得て成虫に→成虫が植物体外に卵のうを形成→卵

……の繰り返しです。

線虫の駆除方法には、農薬の使用や太陽熱を利用することが考えられます。

また、線虫は一度発生してしまうと非常に厄介なので、植え付け前に予め土壌をしっかりと消毒しておくことが大事です。

ですが、土壌は地下などでつながっているため、これらの方法でも根絶することは難しいです。

まとめ

線虫とミミズの違いを見てきました。

人畜無害な線虫、植物に寄生する線虫、動物の体内に寄生する線虫……地球上には様々な線虫が数多く棲んでいます。

カタツムリの脳を乗っ取り、ゾンビ化して自分の思いのままに操る線虫もいれば、地下3.6キロの深さに棲む線虫(「ファウスト」に登場する悪魔の名に因んで「ハリケファロブス・メフィスト」と名付けられた)もいますし、クジラの腎臓に寄生する線虫の一種・クラシカウダは長さ数mにも及ぶといいます。

かと思えば、がんの臭いをかぎ分ける線虫もいるというのですから、全く驚くべき生き物ではありませんか!

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