古事記では、イザナギノミコト(伊耶那岐命)とイザナミノミコト(伊耶那美命)との間に生まれた最初の神の名が「蛭子」だとされています。
国創りの際に、神々が手順を間違ったせいで良い子が生まれず、仕方なく葦の舟で流してしまいます。
一説では、骨がなく、ぐにゃぐにゃしていたため、「蛭子」と名付けたとされています。
骨がなく、ぐにゃぐにゃしているのは、ミミズもヒルも同じですよね。
では、両者にどういった違いがあるのか見ていきましょう。
ヒルもミミズも環形動物。ミミズの天敵はヒル!
環形動物門は、ミミズが分類される「貧毛綱」、ゴカイが分類される「多毛綱」、ヒルが分類される「ヒル綱」の3つで構成されています。
ミミズは、環形動物門貧毛綱に属する生き物の総称で、土壌中の微生物を餌にします。
ヒルは、環形動物門ヒル綱に属する生き物の総称です。
ヒルは、ミミズと同様、体の前方に環帯があり、腹部位に雌雄の生殖孔があります。
多くのミミズと同じく、ヒルも雌雄同体です。
同じような姿形をしていますが、ミミズと違い、ヒルは体の前後端に吸盤を持っています。
餌は肉食性であり、小動物を食べるヒル、大型動物の血を吸っているヒルなどがいます。
ヒルには吸血のイメージが強いですが、血を吸わないヒルもおり、その多くは、ミミズなどを餌にしています。
例えば、ヤツワクガビルという種は、湿った陸上に棲んでおり、シーボルトミミズなどの大型のミミズを丸飲みにしてしまいます。
また、「コウガイビル」という生物は、その名前からしてヒルかと思いがちですが、「扁形動物門」の「プラナリア(ウズムシ)」に分類されるのでヒルではありません。
こちらもミミズの天敵です。
ヒルとミミズの体の構造の違いなど
一般的に、ミミズの体は細長く、多くの体節に分かれています。
体表面には、体節ごとに短く頑丈な毛が生えています。
ミミズは、この頑丈な毛で進行方向に引っ掛かりを作りつつ、前方に移動します。
骨が無いミミズが土を掘り進むことができるのは、体節ごとに体腔液の圧をかけることで体を頑丈にできる(静水力学的骨格)からです。
酸素濃度が薄いと生きられず、皮膚呼吸のミミズは水中では溺れてしまいます。
ヒルはミミズとは違い、体の前端と後端に吸盤を持っています。
この吸盤は、餌を獲る時や、生息活動に用いられます。
体節が多くあるように見えますが、実際は体表面の環状のシワがそう見せているだけです。
ヒルの多くは淡水に棲み、また、陸上や海水にも棲んでいます。
水に適応したヒルたちは泳ぐことができます。
ミミズと大きく違うのは、肉食性であること。
ミミズは格好の捕食対象です。
また、吸血性のヒルもいます。
吸血対象は、人や猿、猪や鹿など様々です。
吸血性のヒルの唾液には、麻酔成分と血液の凝固を妨げる成分が含まれているため、噛まれた対象は痛みを感じずに血を吸われ続け、気づかぬうちに流血が広がっていることも多いです。
ヒルには毒性がないとされています。
また、日本にも生息するハナビルの幼生は、体内に潜り込んで吸血するヒルです。
これは体内に寄生されるのと同じことで、多くの場合、ヒルの幼生が寄生する部位は下・中鼻道です。
ヒルの幼生に体内に潜り込まれて吸血されることを、内部蛭症と呼びます。
ヒルのいろいろ
ヤマビル
吸血性です。
茶褐色や赤褐色をしており、背面に3本の黒い縦線があります。
ヤマビルが肌に張りついていたら、虫よけスプレーをかけて、すぐに剥がしましょう。
傷口から血を押し出すようにして、流水で良く洗いましょう。
アンモニアは絶対に使わず、抗ヒスタミン剤を塗布しておきましょう。
チスイビル
吸血性です。
水田や沼地に生息し、背中は緑灰色をしており、数条の縦線が見られます。
水田や沼地で暮らしています。
ヤツワクガビル
吸血しません。
背中に黒いスジがあり、両脇はオレンジがかった黄色をしています。
ミミズを餌にしています。
人に危害は加えません。
まとめ
ヒルとミミズの違いを見てきました。
両者共、ぐにゃぐにゃ系の生き物ですが、ミミズはヒルの捕食対象です。
自然界に天敵はいなさそうなヒルですが、塩をそのままかけるとナメクジと同様、命を落としてしまいます。
また、血を吸う生態を利用し、古代ギリシャや古代エジプトではチスイビルを医療行為として用いたそうです。
ヒルは血を吸うだけで膿は吸ってはくれないでしょうが、血流の滞り改善目的としてなら使えそうです。