光沢のあるネイビーブルーは、綺麗という表現は当て嵌まらず、ただただ不気味。
突如、ニョロッと地表に現れたその姿は、巨大にして気色悪い。
体長40㎝を超え、体の太さは男性の指のおよそ2倍。
体をぐねぐねとくねらせて地を這う姿は、まるで蛇かと見まごうばかり。
雨で地面が濡れていれば、猛スピードで急斜面を滑り降り、目撃者の度肝を抜く。
谷底にぐにゃぐにゃとひしめき合うソレを悪戯心で掴もうとすれば、すかさず白い毒液を噴射し、攻撃してくる。
毒液が目に入れば、被害甚大この上なし。
これ……新種のモンスターか何かの話しでしょうか?
山ミミズ。別名シーボルトミミズの特徴や毒液について
新種モンスターかと思いきや、これは実存するミミズのことで、山ミミズ(シーボルトミミズ)という名前です。
西日本の山林に生息しており、独特の青紫色の体色をした大きなミミズで、日本にいるミミズの中でも最大種の一つと言われています。
日本固有種のミミズで、四国や九州南部などに棲んでいます。
普段は森林などの落ち葉の積もる地中で暮らしていますが、大雨が降った後などに時折り地表に姿を現すので、目撃した人はかなり驚かされます。
地表が濡れていれば、物凄いスピードで移動するとか。
シーボルトミミズの名の由来は、江戸時代に来日したフィリップ・フランツ・フォン・シーボルトに因んでつけられました。
初めて学名が与えられた日本産のミミズです。
各地では方言名で呼ばれることもあり、「カンタロウ」、「カンタロミミズ」、「カブラタ」などの異名を持ちます。
特徴
体長はおよそ40㎝に達することもあり、体の幅はおよそ15㎜。
体節の数も多いです。
寿命は卵の時期を含め、3年だと言われています。
産卵は、毎年は行われず、同じ地域で同じ世代の個体が同期するライフサイクルです。
つまり、全ての個体が一斉に孵化し、成体となり、一斉に亡骸となるのです。
夏季は広く散らばって生息していますが、越冬の時期には全ての個体が谷底に移動します。
体の前部分を持ち上げ、かなりの速度で斜面を次々と滑り降りてきては、谷底や林道の側溝などにうじゃうじゃと集結します。
綺麗な色を持つ生き物には毒があると言いますが、光沢のあるネイビーブルー色の山ミミズが捕食者から警戒されて食べられないか、というとそんなことはありません。
猪が食べますし、ウナギを釣るときの餌にも使われます。
釣り上げた大きなイワナの腹から、このミミズが出てくることもあるそうです。
また、雀より少しな大きな八色鳥(やいろちょう)という鳥が好んで餌にするそうです。
クガビルは、シーボルトミミズを丸呑みします。
山ミミズ(シーボルトミミズ)の毒液について
シーボルトミミズの体には背孔という孔がいくつもあり、その孔から毒成分を含む体腔液を噴射します。
刺激を受けたり、自らの防御反応から噴射するようです。
以下は、体験者談によるものです。
「素手で掴んだ際、液が飛び出し、顔や眼鏡にかかった。おそらく背孔から噴射されたものだ。タオルですぐに拭えば特に問題はなく平気だった」
「西日本旅行で、毎度シーボルトミミズに遭遇する。一度、液体を噴射してきたことがあり、ヨーロッパサラマンダー(ファイアサラマンダー)が毒を噴射する様子と似ていたので驚いた」
ヨーロッパサラマンダー(ファイアサラマンダー)は、後頭部の両側の耳腺と背中に毒腺を持つ陸生有尾類のことです。
「シーボルトミミズに触ると粘液を飛ばしてきた。うっかり目の中に入ってしまい、その後は目やにがたくさん出て、まぶたが腫れ出し、翌朝にはまぶたが開かなかった」
「土を掘っていて、ヘビのような巨大なミミズをざっくりと切ってしまった。覗き込もうとしたところ、真っ黄色の液を勢いよく噴射してきた。もう少し距離が近ければ目に入るところだった。思い出すだびおぞましい」
小さなシマミミズですら、刺激を受けるとライセニンという成分を含んだ黄色い液をじわりと出します。
ライセニンは赤血球膜血液で溶血を起こすなどの作用があります。
図体の大きな山ミミズ(シーボルトミミズ)の体腔液が目に入ったり、粘膜に付着すれば、やはり、ただでは済まないでしょう。
まとめ
山に棲む巨大なミミズは「シーボルトミミズ」という種類だとわかりました。
江戸時代に来日したシーボルトに因んで名づけられ、初めて学名が与えられた日本産のミミズです。
各地方により、呼び方が異なることがあります。
身の危険を感じると、背中の孔から体腔液を勢いよく噴出し、それが目に入れば酷い目に遭います。