土壌改善に役立つミミズと違い、回虫は寄生虫の一種です。
寄生には外部寄生と内部寄生があり、回虫は典型的な内部寄生虫です。
寄生虫は、寄生される生物(宿主)が動物に分類されるものを指します。
動物の体内に侵入し、その動物の内部器官に棲みつき、栄養的に依存します。
回虫は、過去から現在までの人類史上に普遍的な関わりを持っています。
古くは紀元前4世紀~5世紀のギリシャ、中国の紀元前2700年頃に記述があります。
国内においても、鎌倉時代頃から農作物の収穫に人糞を利用していたため、野菜に付いた回虫の卵が経口摂取されることで寄生される人が蔓延しました。
「回虫」という名が示す通り、成虫に至るまで動物の体内を回り巡って棲みつきます。
ミミズは環形動物門に属し、回虫は線形動物門。動物ごとに専門の回虫がいる
ミミズは環形動物門貧毛綱に属する生き物です。
主に土中で暮らしており、土壌中の微生物を餌にしながら、実は広大な大地を耕しているのと同様な働きをしています。
大概は益虫(虫ではないですが)としての地位を与えられており、例え、「ミミズの卵」を経口摂取したにせよ、人体にミミズが寄生し、害を与えることはないのです。
ですが、回虫は違います。
回虫は人間や犬、猫などの体内に寄生して卵を産み、それが再度、宿主の口に入って戻ってくるという……
まさに「回虫」の名にふさわしいライフサイクルです。
成熟した雌は1日10万~25万個もの卵を産み、多数の回虫に寄生された宿主が重篤な症状に陥ることもあります。
もう少し詳しく見ていきましょう。
回虫の特徴など。ミミズとの違いは?
回虫は、線形動物門双腺綱に属する線虫綱回虫科の袋形動物です。
体はミミズに似て細長い体型をしていますが、色はミミズと違い、黄白色です。
体長およそ20~40㎝になり、雌の成虫は雄より大きいです。
多くのミミズは雌雄同体ですが、回虫は雌雄異体です。
環形動物のミミズとは違い、線形動物の回虫は(ミミズのような)体節や環帯はありません。
ミミズは食物連鎖の最下層に位置する生き物ですが、人間と共通する体の器官を、実はミミズも多数持っています。
脳、心臓、腎臓、腸、性腺、肛門などです。
一方、回虫は、体の両先端に口と肛門があり、体幹を腸が貫通しています。
体の大部分は発達した生殖器で占められています。
基本的には、人間に適応した人回虫、犬に適応した犬回虫など、それぞれの動物に適応した専門の回虫がいます。
回虫は、宿主の小腸内に寄生し、宿主が摂取する栄養分の一部を奪います。
宿主の小腸内で産み落とした最大25万個の卵は、宿主の糞便と一緒に体外へ排出され、およそ一ヶ月で成熟卵となります。
それらが何らかの事情で経口感染により、新しい宿主になり得る別の動物の胃に入ると、卵殻が胃液で溶け、孵化した幼虫が宿主の小腸に移動、その後、小腸壁から血管内に侵入し、肝臓から肺へ到達します。
1㎜ほどに成長した幼虫は気管支を上り、新しい宿主の口に到達し、再び飲みこまれることで、またもや小腸に戻ります。
そこで成虫になり、宿主の栄養分を奪い取りながら、最大25万個の卵を産み落とします。
産み落とされた卵は、宿主の糞便と一緒に体外へ排出されるのです。
このように体内を回り巡るライフサイクルのため、「回虫」と名付けられたのです。
回虫症(人畜共通感染症)
犬回虫の卵や猫回虫の卵が、何かの弾みで人間の口に入って経口摂取されると、回虫は人の小腸内で孵化し、幼虫になります。
犬回虫や猫回虫は、人に寄生する回虫ではないため、人は宿主として適応できません。
幼虫が腸壁から侵入して体内を動き回り、内臓や眼などに到達し、重篤な症状を引き起こすことがあります。
トキソカラ症と呼ばれています。
これを防ぐには、犬や猫に過剰なスキンシップをしないことです。
もし飼い犬が宿主の場合、お尻を舐めた舌で飼い主の顔(口回り)を舐めれば、そこに回虫の卵が付着してしまうのです。
また、いくら可愛いからとはいえ、犬や猫と同じ布団で寝るのは避けた方が良いでしょう。
まとめ
回虫とミミズの違いを見てきました。
ミミズと違い、回虫は寄生性です。
回虫の卵は土壌で孵化することはありません。
出所や栽培法がわからずに気になる野菜などは、念のため良く洗って加熱調理しましょう。
犬や猫が回虫の宿主の場合、何かの弾みで人が経口摂取するとトキソカラ症を発症します。
公園の砂場などを猫がトイレとして利用することも多いため、特に小さなお子様は注意が必要です。