「飼い犬のお尻からミミズに似た虫が出てきた」
「具合悪そうにしている飼い犬が吐き戻したのを覗くと、その中にミミズに似た虫が蠢いていた」
など、身の毛もよだつような実例がいくつもあります。
いわゆる寄生虫というやつですが、ミミズと姿形が似ています。
これって、同じ分類と考えて良いのでしょうか?
寄生虫とミミズは分類が違う。ミミズが待機宿主になることも
ミミズは、目がなく手足もない紐状の虫?
いえ、虫としては分類されていません。
陸棲貧毛類であるミミズは、環形動物門貧毛綱(学名: Oligochaeta)に属する動物の総称として分類されています。
虫ではなく、動物扱いですね。
一方の、犬回虫症の原因となる生き物を例に挙げれば、線形動物門双腺綱回虫目と分類されている回虫で、虫扱いです。
見た目は結構似ていますが、寄生虫とミミズは違う生き物です。
寄生虫とミミズの違い
「トイレを流そうとしたら、トイレの中にミミズのような生き物がいた。ミミズでしょうか?寄生虫でしょうか?心配でたまりません」
という体験者談がネット上に載っていました。
ミミズは排水管をたどって上ってくることもあるそうで、二階のトイレなどの中に、湿り気を求めてうっかりと紛れ込んでしまうこともあるとか。
ミミズは環形動物門貧毛綱に属する動物なので、寄生虫とは全く違います。
宿主に寄生することなく生きていけます。
ですが、寄生虫は違います。
寄生虫は、飼い犬のみならず、飼い主にとっても非常に憂慮すべき問題です。
犬に寄生する主な虫には、体の中に寄生するものと、体表面に寄生するものがいます。
ミミズに似た寄生虫は、主に消化管内部に寄生する犬回虫、犬鉤虫、犬鞭虫の3種となります。
清潔にしている犬でも寄生される確率は高く、成犬では慢性的に寄生され続け、無症状のことも多いです。
寄生された幼犬には、嘔吐や下痢、血便などの症状や発育遅延などが見られます。
症状に気づかず放置しておけば、犬が命を落とす危険性もあります。
また、寄生された犬の体毛に虫の卵が付着しているのに気づかず、何かの拍子で飼い主が経口感染してしまったり、公園の砂場などでこれらの虫の卵を小児が経口感染して発症するなど、犬のみならず、人間への感染も大いに考えられます。
ミミズが待機宿主の可能性も……
犬はミミズのにおいが大好きで、ミミズを見つけると体を擦りつけたり、喜んで食べてしまうことも多いと聞きます。
乾燥したミミズを粉砕して漢方薬にすると言いますから、「ミミズを食べるのは良し、良し」などと思ってはいけません。ミミズが、寄生虫の待機宿主(中間宿主)である可能性があるのですから。
基本的に、ミミズ自体には寄生虫からの悪影響はありません。
ですが、ミミズを犬が食べることにより、ミミズの体内に潜んでいた寄生虫に、犬が感染してしまうのです。
毛細線虫という寄生虫は腸管から肺、腎臓を経由して犬の膀胱で繁殖し、成虫になります。
成虫の数が多いと卵などが膀胱の出口で詰まり、膀胱炎の症状を引き起こします。
また、サナダムシもミミズが中間宿主だと言われています。
まとめ
ミミズは動物として分類され、虫ではないことがわかりました。
また、犬に寄生する寄生虫の中間宿主には、ミミズが挙げられます。
土壌の中には様々な土壌微生物(細菌、糸状菌、原生動物、線虫など)がいます。
土中に潜り、これらの微生物を餌とするミミズの体内には、植物に役立つ微生物ばかりではなく、細菌や線虫類も生存していると考えられます。